税理士は会社登記ができるのか?

「会社の設立業務(法人設立登記)を、報酬無料で、自分でやるより安くできます!」という税理士事務所・会計事務所は、インターネットで「会社設立 無料」などど検索すれば、多数検索できます。

もちろん、会社設立後に税務顧問契約を締結することが前提ですが、新規顧問先獲得のために、「法人設立登記を無料で行います!」という広告を出す税理士が多くなりました。

ところが、税理士は、会社設立登記申請を代行しては、いけません。もし、税理士が、会社設立登記申をした場合、違法行為となります。

登記を司法書士以外が行った場合、司法書士法違反に該当します。

司法書士法第73条により、非司法書士行為は禁止されております。司法書士法第73条1項には、他の法律に別段の定めがない限り、司法書士または司法書士法人でない者は、次に掲げる業務を行ってはならないと規定されています。この規定に違反した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(司法書士法78条1項)。

  • 登記に関する手続について代理すること
  • 法務局または地方法務局(登記所)に提出し、または提供する書類または電磁的記録を作成すること

登記を税理士が行い、逮捕された例

例えば、毎日新聞2012年3月28日地方版に「司法書士法違反:容疑の元税理士逮捕 元勤務先も書類送検 /神奈川」という記事が掲載されました。

税理士は、税理士の名をもって、会社登記業務を行うことはできません。上記のとおり、登記業務は司法書士の独占業務と法律で定められています。国家資格というのは、それぞれに独占的に行える業務範囲が法律で定められています。違反すると最悪の場合、逮捕されてしまうのです。

しかし、この元税理士さんは、税理士として登記申請を行ったわけではないです。そもそも法務局が受け付けてくれません。この裏には、登記申請のために必要な書類の作成を行って、あくまでも申請者本人が法務局に申請した形式をとっていることが伺えます。「登記手続の代行」とうたっておきながら、実際には設立登記を本人申請の形にして、責任の所在をあいまいにしたのです。

つまり、会社設立後に登記の内容に重大な問題があることが発覚した場合に、「私は登記手続に関与していないので責任はありません」と言って逃げようとしたのでしょう。しかし、現実にはこうした仮装本人申請も行ってはいけないこととされているため、逮捕されてしまったのです。

登記を請け負う税理士業界の今後

某税理士事務所の無料相談でも、「設立手続きはやってもらえないのでしょうか?他の税理士事務所さんでは、無料でやってくれるところがたくさんあるみたいですが。」というご質問を受けることが増えているそうです。

真っ当に法律を守っている税理士事務所であれば、丁寧に説明して代わりに信頼のできる司法書士さんをご紹介するでしょう。お客様の立場からすれば、士業の違いからできないということも知らない場合も多いですし、別の司法書士事務所を探す手間もかかります。一番は、設立費用が別途かかるのは納得できないのかもしれません。

しかし、法律を扱う税理士が、法律違反をしているのはいかがなものでしょうか。過去、行政書士会と司法書士会の間で行われた協議のように、近い将来、税理士会と司法書士会の協議も行われることになるのかもしれません。

 

根拠法令抜粋

司法書士法 第3条(業務)

司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一  登記又は供託に関する手続について代理すること。
二  法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類(中略)を作成すること。
(以下略)

司法書士法 第73条(非司法書士等の取締り)

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(以下略)

司法書士法 第78条(罰則)

第73条第1項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(以下略)

根拠法令の構成

  1. 司法書士業務の規定(第3条)
  2. 司法書士以外の者の取り締まり規定(第73条)
  3. 罰則規定(第78条)

なお、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処された行政書士や税理士は、原則免許停止の懲戒処分に処されます。悪質な場合は免許取消の懲戒処分に処されます。

税理士が業務停止処分を受けた場合

税理士法 第4条 (欠格条項)

次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、税理士となる資格を有しない。
(中略)
六  国税又は地方税に関する法令及びこの法律以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しないもの
七  懲戒処分により税理士業務を行うことを禁止された者で、当該処分を受けた日から三年を経過しないもの
(以下略)

税理士と行政書士を兼業している者が、どちらかの資格において業務停止処分を受けた場合

税理士法 第43条(業務の停止)

税理士は、懲戒処分により、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士若しくは社会保険労務士の業務を停止された場合又は不動産鑑定士の鑑定評価等業務を禁止された場合においては、その処分を受けている間、税理士業務を行つてはならない。税理士が報酬のある公職に就き、その職にある間においても、また同様とする。

税理士の懲戒処分に係る非違事例

税理士・税理士法人に対する懲戒処分等件数の推移をみると、平成13年度までは一ケタでしたが、その後は毎年二ケタの人数となり、平成20年度の30件以降、平成21年度が29件、平成22年度が37件、平成23年度が34件と高水準で推移し、平成24年度は40件の大台に達しました。

税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の件数は、平成25年度で50件ありました。これは、過去5年間で最も多い数であり、21年度の29件と比較しても72.4%の増加です。

これらの事実を踏まえ、税理士法改正・懲戒処分の適正化により、平成27年4月1日以後の非違行為について、業務停止処分の期間が改正前は1年以内だったところ、改正後は2年以内へと延長されました。

サブコンテンツ

このページの先頭へ